2010年9月10日金曜日

ローカルノートブックの効果を測定してみた



オンラインの意味


私がEvernoteを使い始めた理由の一つに、クラウドwebサービスだから、というのがあります。
いつでもどこでもどんな端末でも見れる、クラウドの利点はその一点にあるわけですから、当然いつでもどこでもオンライン。しかし最近、果たしてそれに意味はあるのか?と考えます。普段iPhoneや外のPCからEvernoteを使うとき、「見たい」というより「見なければいけない」用途が多いのではないでしょうか。趣味で集めているライフログ、ネタwebクリップ、アーカイブ、この辺りをiPhoneから見ることは限りなくゼロ。実際私は一度も見たことが無いです。
ということは、これらのノートたちはオンラインである必要はないのでは?時間をかけて同期しなくても困らないのでは?と思ったのがきっかけ。


Macを常用しだしてからEvernoteもずいぶんと軽くなったので、同期の時間には全く不満はないのですが、一度気にしだすとやってみないと気が済まないので、実践してみました。


やる前に予想できるメリットは
1、同期に時間がかからない
2、iPhone、webのEvernoteが軽くなる(整理もしやすい)
3、容量を使わずに済む


逆にデメリットは
1、外で全てのノートに触れない(精神的なデメリット)
2、常にオンラインノートブックを整理する必要がある(ローカルノートブックの恩恵を受けるため)
3、デメリット2の結果、多分今以上に作業が面倒になる
4、ローカルデータは管理が個人に委ねられるので、消えたら最後(先日のデータ消失もあるので、オンラインでも安心はできませんが)
5、手書きメモのテキスト認識ができなくなる(この機能はwebでやってるからローカルじゃ動かない)


実際にやってみた


ノートブックのオンラインとローカルの属性は一度ノートブックを作るときにしか設定できません。
ですので手順は


1、適当な名前のローカルノートブックを作る(仮にAノートブック)
2、ローカル化したいオンラインノートブック内のノートを全てAノートブックに移動
3、空になったオンラインノートブックを削除、Aノートブックの名前を適宜修正


という具合。ノートブック間の移動は比較的楽なので、作業自体はらくちんです。あとはどんな具合か調査していくだけ。


ちょっとしたテスト


実践できるようにはしたもののすぐに効果は分からないので、測定テストをしました。成果を感想でまとめるより、ある程度数字で分かった方がローカルノートブック効果も伝わりやすいかなと思います。


試験内容


使うのはオンラインノートブック2つ(A)、(B)とローカルノートブック(C)


準備
webのEvernoteから60枚のノートを(A)に作成。
ひとまずMacのクライアントで同期。
このノート60枚を使ってテスト。測定を始める前は60枚のノート全て(A)に移して同期した後に行う。


試験内容、各同期時間を測定


1、そのまま再同期。
2、全てのノートを(B)に移動して再同期。
3、全てのノートを(C)に移動して再同期。
4、半分のノートを(A)、もう半分を(B)に移動して再同期。
5、半分のノートを(B)、もう半分を(C)に移動して再同期。
6、半分のノートを(C)、もう半分を(A)に移動して再同期。
7、(A)、(B)、(C)に均等に分けて再同期。



見やすいように図にしたらこんな感じ。



一応ローカルノートブックとオンラインノートブックだけでなく、差分更新と全更新の差とかも調査できるようにしました。
本当はもっと測定値をとってプロットしたり、Windowsでもやれば使い道も広がるんでしょうけど、なんせ手間がかかるのでこの程度でご了承ください。また、回線速度にムラが出ないよう深夜にまとめて測定しましたが、ある程度誤差はあると思います。その辺りも含めて、測定値を見ずに傾向を見てローカルノートブックの効果を掴んでもらえればと思います。


測定結果はこちら。




ノート数が少なすぎて分かり辛い結果になっていますが、総じて言えることは(B)が絡むと時間がかかっていること。これはオンラインノートブックからオンラインノートブックに移動すると、webでは2つのノートブックが更新されるため同期時間が長くなるということでしょう。裏付けに4と6の結果にもその傾向が表れています。本当は(A)、(B)の組み合わせは他の組み合わせに比べて倍の時間がかかるのか確認したかったんですが、今回はノート数が少ないこと、すべて白紙のノートで行ったこと、そもそも一回ずつの測定なんて当てにならないことなどの不安要素を考えると、この辺りが関の山でしょう。


iPhoneでもテスト


この測定値はMacで無線LNANIEEE 802.11bでの値ですが、もしプラットフォームが変わっても傾向は同じのはずです。つまり、iPhoneなど携帯端末の同期速度の向上も見込めるというわけです。実際どの程度違うものなのかと、少し実験してみました。


やったのは「inboxだけ常に空にする」ということ。Evernoteで最も更新されるノートブックは間違いなくinboxです。しかし私の場合、ほとんどはwebから自動ポストされるものなので、iPhoneで同期してすぐ見たいようなノートでは無いです。ということはこのノートブックの同期は完全に無駄。しかしinboxはデフォルトノートブックなので、同期しないわけにはいきません。なので、iPhoneでEvernoteを同期する前にPCでinboxを空にしてしまおう、という試みです。


実際に試したところ、体感速度はかなり早いです。測定はしてませんが、iPhoneのEvernoteを立ち上げても同期は1、2秒だけで、そのあとは快適そのもの。同時に今までたくさん並んでいたノートが最低限しか表示されなくなったので、随分見やすくなりました。iPhoneのEvernoteの記憶量が少なくなったので、閲覧や検索もサクサク行えます。正直、同期速度の向上よりこちらの恩恵が随分大きく感じました。


一方でデメリット


数字上では「ローカルノートブックは効果あり」と分かりましたが、これだけ快適にするにはデメリットも大きいです。


まず第一に、常にinboxを空にする必要があること。
inboxは全てのノートの通り道なので、人によっては一日でかなりのノートが作られます。ちなみに私は平均40枚前後、多分これでも少ない方だと思います。この溢れかえらんばかりのノートブックを常に空にしないといけないんですが、これがかなり面倒。


次にクラウドの意味がなくなること。
私が考えるクラウドの利点は「いつでもどこでも見れる」ことと、「データの保障がある」ことだと思います。しかしこのローカルノートブックを使ったノートには、それらが全く適用されなくなります。極端な話、ローカルにテキストを保存しているようなものです。Evernoteであればノートブックを移動すればすぐにオンラインに出来ますし、バックアップもとれますが、手を伸ばせば目の前にある安心感からは程遠くなります。


結局は使い方次第


このローカルノートブックには、色々と目に付く部分もあり、同時に大きな旨味もあります。いつものEvernoteを象と例えるなら、ローカルノートブックを使ったEvernoteは馬。スマートに早く動ける分、力では敵わないといった感じ。ですので、それぞれのメリット、デメリットを見なおして自分に合った使い方を考えてみるといいと思います。


私の場合普段のEvernoteの整理などはMBPを使っているので、本当にすべて持ち出したいときはMBPごと持ち出せるというところで妥協。また自宅のPC、Macはバックアップをとっているので、クラウドと同じレベルではないが、ある程度の保障はある。面倒なinboxの整理は、もともと使っていたセパレートノートブック(過去記事参照)をローカルノートブックにして、毎日そこに移動。整理はできてないが目的はinboxを空にすることなので、ひとまずこれでOK。
といった具合にしました。ちなみにセパレータノートブック本来の仮置き機能が一時置き場になってしまったので、現在はセパレータを2本に増やしてます。一時置き場の方は今までのinboxのような役割になってしまいました。


ローカルノートブックの効果を完璧に得るのは難しいですし、なにより疲れるので、適当な具合に実践するのがいいのかなと思います。白か黒ではなく、グレーで使える気楽さがEvernoteらしさでしょう。
最近の私のEvernoteのテーマは、適当で快適です。そんな人にはローカルノートブックはとてもオススメ。一度試してみてはどうでしょうか。

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